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2008.11.28 Friday

相席

学生時代に良く行った中野の炉端焼きのお店に、30年振りくらいで行きました。
炭火で焼いてくれるお魚が絶品です。3階まであるお店は満席…相当待ちますよ…と受付の人に言われたけれど、あきらめきれずに「待つ!」と言ったら「相席なら…」とすぐに入れてもらえました。
名物だった大きなおにぎりも健在で、何よりも不景気風も感じないほどの活気が嬉しかったな…。たまたま同席した方が、な、なんと私のデザインしたハンカチを膝にかけていて下さっているのを発見!
会釈程度の会話から、一気に話が盛り上がってしまいました。お話を聞いてみるとお住まいも我が家の近所。つくづく縁とは不思議なもの…と思いました。

今夜、私はこの出会いをブログに書くので、そこものぞきにきて下さい…と宣伝しましたがついうっかりとお名前をうかがうのを忘れました。お母様と娘さんのふたり連れ。とても仲良しの母娘と思いました。
私も久しぶりに息子と一緒だったけど、相席になってすぐに「親子さんでしょう。お顔がそっくり…」と言われてちょっと嬉しかったな…息子は複雑かもしれないけど(笑)

中野という街は、母方の地元です。杉並は父方の地元。
学生時代から隣り合わせの街を交互に暮らしました。今も杉並に事務所と自宅があり
倉庫は中野にあります。
…これも縁かとも思います。

今夜久しぶりに中野に行き、数件の店に見覚えがありました。三十年以上経ってもまだ
変わらずに営業できるのは、やはり日々の努力なのだと思います。
そういえば、私が最初にはじめたお店「ぱんどらの箱」も丁度三十年目を迎えました。商売のことも何も知らずに、今考えると無謀とさえ思えるような突っ走り方で…良く続けて来れたな…。

思い切った改装をしたくて、何度もトライしようとしたけど、
「このままがいい…」という声を聞いて、何度も断念してきました。

私もたまに「ぱんどらの箱」に行くと、棚や壁に直接描いた絵が懐かしく…確かにこの扉も窓も壊せない…と思うのです。

2008.11.24 Monday

シャケと軍手

山本恭司さんに勧められて「シャケと軍手」という芝居を観に行きました。とても久しぶりの観劇です。
場所は、私のいつも散歩コースの途中にある中野光座…我が家から自転車で行ける距離というのも嬉しかった。
ちょうど夕飯時ということもあって、家族の了解を取り、今日行こうと決めたのが5時半も過ぎた頃。調べてみると開演は6時。前売りは売り切れ…でも当日券ならまだ滑り込めると言う情報を電話で確認して、大慌てで家を飛び出しました。
お化粧をする時間はなかった(笑)とりあえず帽子を目深にかぶれば、いいか…。

飛び込んだのは本当に開演ギリギリ…「しばらく外でお待ちください」という声と、佐野史郎さんの「すぐに入って頂いたら?」という声を同時に聞いて、「一番前の奥の席にどうぞ」と言う声に促されて、座った途端に幕は開いた。

夕飯のメニューのことや、帰りに買って行く食材のことなど、煩雑に頭の中を占めていた現実から一気に芝居の世界へ誘導される演出は見事でした。

私は少しだけ、芝居にはうるさい。子供の頃、母の芝居好きに付き合ったおかげで、結構普通の人よりも、観劇の回数は多い方だと思う。物心が付いてから大学時代まで、月に一度以上のペースで、あちこちの舞台を廻り歩いた。

けれど最近はかなりのご無沙汰…内容は事前にKyoji先生からのメールに添付してあったサイトを見ていた。…それはまだ記憶に新しい実際の事件を元にして書き上げられた脚本だと言う。副題には「秋田児童連続殺害事件」とあった…。

かなり世間の情報を意識的に遮断している私にも、そのニュースは飛び込んできていた。テレビカメラは容赦なく、まだ犯人と確定される前から、容疑者というレッテルを貼られる前から、彼女の言動を克明に映していたし、衝撃的な結末も世間の好奇心を充分に満たしたものに違いなかった。
…それを一体脚本ではどう捕らえているのだろう…被告に同情的なのか、それとも…その性質故に、もっと好奇心をあおるような作り方なのだろうか…。
あれこれ考えていた予想は見事にはずれた。

…それは人間の本質を現した素晴らしい上質の文学だったと思う。私はいきなり傍聴席に座った人のようになり、事実ではなく真実に迫ろうとしている台詞の一言一言に、無条件に揺さぶられていた。
感動した場面は色々あって…けれどここに記す訳にはいきません。やはりそれはご覧頂かないと…。

主演の石川真希さんは、とても自然体で……演じていると言う場面はひとつも感じさせないほどの名演で、それを盛り上げて行く俳優さんたちの「温度」も高かった。全体に何か崇高なものが流れている…志の高さと言うか、決して派手な演出ではないのだが、核心を突いて来るものがきっちりと顔を出して、どんな俳優さんの顔にも一点の迷いも感じなかっただけでなく、彼らの表情にはここに参加していると言う誇りのようなものがあった。
そういう現場に遭遇した時、私は自分のなかにあるマグマのようなものが流れ出すような感覚を持ちます。

佐野史郎さんは、決してテレビの画面からは見えないものが発光していました。考えてみれば当たり前のようなこと。彼がどんなに芝居が好きか…その世界をどんなに愛しているか…に、圧倒され…彼の想いの根底に触れたような感覚がありました。

正直に言えば、今12月のYAMAHAの舞台のスパートになかなか入れなかった私を、きっと触発してくれるに違いないとの期待もはずれた(笑)
完全にノックアウトされたリンクの上の天井を見上げている気分だったかな…。
それほど素晴らしい完成された舞台でした。
是非皆様も、この機会に…たぶんチケットは残り少ないと思うけれど、当日券を狙って潜り込んで下さい。絶対にお勧めの舞台ですよ。

その帰り、私はスーパーに寄って「生ジャケ」を買いました。
今夜はムニエルにして食べます!
軍手は使いません。当分…それはこの舞台を観た人にしかわからない隠語でしょう。

…そして私はこの舞台に心から感謝したいことがあります。日本の表現の現場は、かなり制約が多いと、いつのころからか私は思い込んでいたところがありました。
それがただの言い訳だったことに…自分の甘さに気づかされたことです。楽しませたいと言う想いは、表現者に共通のものだと思うけれど、どこまでも深く心のひだに分け入り、その中に希望や救いや希望を織り交ぜて作品に仕上げることの素晴らしさを勉強させて頂きました。脚本、演出を手がけられた山崎哲氏に、心から敬意を表します。


2008.11.22 Saturday

化粧について

お化粧にハイライトを入れると顔が立体的に見える場所があります。
例えばまゆの下。
そこにホワイトを入れる化粧は、気合いが入っているとき。…昨日はそんな化粧をしました(笑)

…人生には、ここ一番と言う時があります。
そんなとき私はじっと心を落ち着かせる意味で、化粧に時間をかけます。その間に、私は私の決意を固めるのです。

自分へのエールは、時々必要。…女に生まれて良かったと思います。お酒も飲めなくて良かったと思います(笑)
音楽作りに夢中になっている私に、新たな参謀が増えました。なかなか頼もしい参謀です。

必然性は、最初から感じていました。考えてもわからないことは、その道の専門家に聞くのが早道。けれど、その出会いがいつ、どんな形で起こるのかを私は計算することはありません。その人は必ず現れるからです。
人間は良ーく考えると、どこかでいつも、自分に足りないものに気づいています。その本質にたどり着くまでは、結構時間はかかるけれど、よく考えます。

それが見えたら、後は簡単に扉が開きます。
けれど、無理矢理すべてを自分ひとりでやろうとすると、扉は開きません。
自分自身への信頼は、別の人を信頼することと同じです。出会いもまた信頼です。

私は歌を作ろうと決心するまでに悶々と長い時を過ごしました。決して軽く考えていたわけではありません。趣味ではなく仕事と言う商業的なものと深く関わる現場では、ただの思いつきや、ちょっと試してみたいと言う甘い考えでは決して継続できないものがあります。
夢を語るには、現実を見つめる時間が必要なのです。

そんな夢と現実の境目に「化粧」の時間があります。
絵を描くように、私は肌の色を整え、シャドーを使い丁寧にまゆを描きます。
現実は隠されて、鏡の中には違う自分がいます。
帽子をえらび、着るものもその場に合わせて整えます。…そう言うことのすべてが昔から行われていた儀式のようにそこにあります。

そんな時間をきちんと過ごすと、一日が本当に楽しく過ごせます。
いつも、なりふり構わず無我夢中で仕事をしている時間の方が圧倒的に長いからこそ
私は、そんな時間がとても好きなのです。
今日も素敵な一日でした。

2008.11.18 Tuesday

孤独なリーダーの歌

さっそくチケットをお求め頂いた方に心からお礼申し上げます。
行きたいと思っても、興味はあっても、予定が立てられなかったり色々な都合で、本当にそこに出かけるのは結構エネルギーがいるものです。

私はいつも明日の予定もたちません(笑)何が起こるかわからない現場なのと、創作意欲の引き金がどこで引かれるか見当がつかないのです。
それは食事の最中だったり、眠っている時だったり、地下鉄のホームにいる時だったり…。

瞬時に私は私の世界へ入って行き、いきなり無口になったり、出先からアトリエに飛んで帰ったりすることもあります。とりあえず喫茶店に入り、書くものを借りたりして、紙ナプキンやチラシの余白に、書き取ることもあります。

子供の頃からずっとそうだったので、私は気づきませんでした。どこかでみんなそういうことを抱えているのだと思い込んでいました。

私は私を扱いづらいと思うこともしばしば。なるべく気難しい顔を見せたくなくて、結局真夜中に集中できるように、焦点を合わせる術を覚えました。
ものつくりはやっぱり修羅です。
けれどそれが生半可なものではないと気づいたのは、かなり大人になってから。それまでは夢中になっているときが一番楽しい時間でした。

今はまた、新しい表現への世界に夢中になっていた子供のころの私と似ています。脇目も振らずに一目散に走ります。そういう現場に出会えると、私はただ無我夢中になり、自分が空っぽになるまで休めませんが、その後に満ちて来る時間を知っているので周りから見るほど大変ではありません。

マラソンを見ていると、時々自分と重ね合わせることがあります。どこから勝負をかけるか…スパートをはじめるか…ゴールを目指して行く過程がとても似ているのです。
大切なのは自分のペース配分。それは自分にしかわからないのです。
最初に走りすぎると失速します。最後の最後に自分の持てる力を最大限に出せるようにするのには、多少のキャリアが必要かな…。
ものつくりは自分のコントロールが一番重要。それこそが命と言ってもいい。

今回のライブを作って行く過程は、思っていたよりも手強かったな。
ある日恭司先生から、とても的を射たメールがきました。
「このコラボは思った以上に難しいものだったね!お互いジャンルは違っても、それぞれに長いことリーダーをやってきてきたから…」と。

私はその言葉を読んで、私の葛藤の所在がどこにあるのか、瞬時に明確になりました。
そして、そのメールの返事に一遍の詩を書きました。
すると、本当にすぐに…ほんの数分で、その詩に曲が付いて「歌」になって返ってきました。
その歌は今も私のMacの中にあります。
タイトルは「孤独なリーダーの歌」といいます(笑)
それはギターの弾き語りのシンプルなもので、歌詞もまだ書ききったとは到底思えませんが、私にはとても高い壁を越えたときの思い出の一曲になりました。

今回のライブの構成にはその歌は入っていません。
もしも、聴きたいと思う方がいれば、コメントを下さい。そのコメント次第では、頑張って仕上げるかもしれません(笑)




2008.11.16 Sunday

チケット発売


ちょっと忙しくて、更新できなくてごめんなさい!
12月20日、21日の両日…原宿で行われるライブの概要が出来ました。
チケットの売り出しは明日、11月17日11時からとなります。同時にインフォメーションもアップされると思うので、こちらも合わせて是非ご覧下さい。










SoulSwitch vol.9 『クリスマスには奇跡が起こる』


日程 12月20日(土) 開場15:30 開演16:00
     12月21日(日) 開場15:30 開演16:00

会場    原宿EX'REALMイベントスペース
住所    東京都渋谷区神宮前1-12-6土肥ビル
TEL     03-3470-7607

主催    ヤマハ株式会社

チケット    全自由(50席) 3000円

チケット備考  お申込受付 ヤマハ株式会社 SoulSwitch project
TEL 03-3470-7607 (10:30〜18:00/月〜金)

出演者   俣野温子 
         山本恭司 


●ドキドキの山本恭司先生とふたりライブ…まさかこんな日が来るなんて…と、まだ実感はわかずにいますが、ひたひたと時間だけが確実に流れていきます。
私は今日も映像とにらめっこ。あと1ヶ月ちょっと…私なりの精一杯をやりますのでどうぞ皆様、是非お出かけください。
内緒だけど、グッズデザイナーとしての、チョーレアアイテムも密かに企画しています。後日必ずプレミアが付きます!

そうそう、YAMAHAさんからチケットをお買い上げ下さった方に私のグッズプレゼントもあるそうですよ。

クリスマス間近の、土、日。原宿の街もさぞ、美しいと思います。
ライブの後はふらりと散歩もいいかもしれません。
ちょっと大人のテイストですが、甘さも苦さも隠し味も。…これ以上は今はまだ申し上げられませんけれど…皆様のご来場心よりお待ち申し上げます。


YAMAHAさんのイベント情報ページはこちらです
 
2008.11.01 Saturday

小さな花

小さな花を見て、心が何かを感じたら、絵描きは筆を持ち、音楽家は曲を作り、詩人は言葉を書くでしょう。
けれど、何も感じない人もいるし、何かを感じてもそれを心の奥に眠らせている人も沢山いると思います。

そして忙しい人は、いつか描こう…いつか歌にしよう…いつかこの花を言葉で表現しようと思いながら、日々を過ごしているのでしょう。
それを忘れないように携帯のカメラのシャッターを押し、そんな画像でいっぱいになったものをみんな、そこかしこにしまい込んでいるものです。
私もずっとそうだったかな…。

けれど、表現しきれないものを心の中にためこんでいくと、ある日心はいっぱいになってしまいます。余白のないページのように、どんどん積もっていってしまうものは、新しいものに感動する余裕さえも失っていきます。

そんなときの解決法は、一括削除です。
以前私は同じことを書いたと思うけど、ものつくりは無から有を生むのではなく、有から無に向かっていくのです。
全てのアイデアを出し尽くし、自分の中に何もない状態を作ります。ひとつしか求められていないデザインも、私はいつも書き続けられるまで、書きます。
…すると、不思議なことが起こります。

パンドラの箱のふたを開けたように、ちゃんと、希望の光が顔を出すのです。
私のものつくりは毎回、おなじ道をたどります。
日常的にアイデアを溜め込んでいる癖がついている私の心は、シーズンごとに新しいもので溢れてきます。情報を遮断しているつもりでも、いつのまにか取り込んでいるものです。
それを全部出してしまうと、私の心は小さな花やささやかなものにも感動できるようになっていきます。

そして直感が研ぎすまされてきます。自分が小さな動物になったように思うのはそんなとき。木々の葉の色が変わる今の季節には、特に私は色の世界へと入り込んでいきます。
ものつくりに詰まったときこそ、私は自分の心のなかに詰まった想いを全部出してしまいます。

完成系を求めるのではなく、断片のようなものを。
失敗も気にしないで、ただ無心に、手に任せてしまうのです。そうしているとまた新しい力がわいてきます。
そしてその中途半端なものを並べてみると、自分がわかります。
たいていの場合、すごいものを作ろうとして、肩に力が入ってしまっているのです(笑)
ものつくりはささやかなものの積み重ね。巧い絵でなくてもいいから、続けていくことがとても大切なのです。
そして、私はそういう絵を今でも沢山描きます。肩の力を抜いたときに描いたものは、見る人も肩の力を抜いて見てくださいます。
人の心に届くものつくりは、考えこんで仕掛けるようなものではありません。
どんな計算もいりません。それは小さな花が咲くように自然に生まれて来るのです。
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