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2019.10.16 Wednesday

和田誠さんの訃報に接して

 

日本列島に未曾有の台風が接近していたその日、

突然の訃報に私は頭が真っ白になりました。

 

奥様の平野レミさんはじめ、ご遺族の皆様にはどんなにか深いお悲しみの中におられるのでしょうか。

心からお悔やみを申し上げます。

 

そして勝手に私の恩師と呼ばせていただいている和田誠先生に

心からのご冥福をお祈り申し上げます。

和田誠さんは、私の人生に大きく影響を与えてくださった方です。

 

少し昔語りを致します。

 

それはまだ私が二十歳のころ、我が家は一家離散の憂き目に遭い

それまで何の疑問もなく訪れていた「明日」という日が

見えなくなっていたときのことです。

 

自分が絵が好きだと気づいたのはちょうどこの頃。

だからもちろんイラストの仕事をやらないかと誘われて

すぐに飛びついた私。

右も左もわからないまま悪戦苦闘しながらも

要望に応えようと頑張りましたが…。

 

一番苦手な地図や機関車や細密な鳥…

当然、納得できるような絵が描けるはずもなく

トコトン自分の非力と向き合っていたとき

私のイラストが載った同じ雑誌に

和田誠さんのイラスト付きのコラムが掲載されていたのです。

 

それは落語家さんの似顔絵でしたが

無駄のない血が通った表情豊かな線、その人だとひと目で分かる瞬間の捉え方

そこで私は「その人でなくては描けない絵」「オリジナル」と向き合うこととなったのです。

 

その和田誠さんのページを見ながら、私は何日も考え続けていました。

 

私はいつか、和田誠さんのように、私にしか描けない絵を描けるようになれるだろうか…。

それを目指すなら、絶対にこのままアルバイトのように絵を描いていては駄目だ。

…それが私が得た結論。

 

その日が来るまで決してイラストの仕事はしない…そう決心したのです。

 

その後も私は独学で、ひたすら絵を描き、自分のオリジナルとはなんだろうと問い続け

その間もいつも、おしゃれで小粋でユーモアを感じる 絶妙な間合いを持つ

和田誠さんのイラストに、魅了され続けていました。

 

 

…それから15年以上が過ぎたある日

私は自分でオリジナル雑貨メーカー「ら・むりーず」を起ち上げて数年が過ぎた頃のことでした。

細いペンで描いた「いじわるうさぎ」というキャラクターが

少しずつ広がっていき、それを私は手作りの人形に仕立てました。

 

どこでどうつながっていくのか、本当にご縁は不思議です。

 

突然一本の電話が鳴りました。

それは、まさかの和田誠さんからの仰天のお電話。

「実は週刊文春の表紙に、あなたのうさぎを描いてもいいでしょうか?」

 

信じられない展開に、私は舞い上がってしまったので

確かこんな会話だったということしか覚えていないのですが…

 

そして、私の作った「いじわるうさぎ」の人形を、

長い間リスペクトしてやまない和田誠さんが、週刊文春の表紙に描いてくださったのです。

 

それは1987年うさぎ年の新春特別号でした。

もちろん、これは今でも私の宝物です。

 

 

 

 

更にその後も私の本の帯に素敵な言葉を寄せていただいたり…

私がどうしようもないスランプに陥ったとき

温かい励ましのおハガキをいただいたり…

 

それから、決して忘れられない思い出は、

和田誠さんの100冊の本の出版を記念したパーティーにお誘いいただいて

夢のような時間を過ごさせていただいたこと。

今でもあの日のことは、鮮やかに蘇ります。

 

ものつくりの日々は自分自身との孤独な闘い。

それが私にとってどんなに大きなお力をいただいたか

いつかゆっくりお礼を申し上げたいと願いながら過ごした日々。

この度の突然の悲報に耳を疑い、深い悲しみに沈んでおります。

 

 

 

気がつけば、この仕事を初めてすでに40年。

私はずっと長距離のマラソン選手のように、長いコースをひたすら走ってきました。

そしてそこにはいつも、私のずっと先を走っている和田誠先生の背中が見えていました。

それはこの先の私の人生にとっても、変わることはありません。

 

僭越ではございますが、あまりに思いがけず どうしても書かずにはいられなくなって、

想いのままを綴りました。

 

和田誠先生…大変お世話になりました。

心から感謝申し上げます。

つい数年前にも、新宿で出版記念のサイン会が開かれると聞き

駆けつけたいと思いながら

長い長いご無沙汰は、ほぼ引きこもりの暮らしゆえです。

どうぞお許しくださいませ。

 

謹んで哀悼の意を捧げつつ…。

合掌

 

 

 

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