思い出の映画 セント・オブ・ウーマン
そう思いながらFBを開きました。
そしてパリに住むFBフレンドのはるみさんの記事を見ました。
セント・オブ・ウーマン。
アルパチーノのタンゴの名シーンの動画付き。
わ、これかも!
huluで検索してみると…ありました!!
もちろん最後まで一気に観て
ぼろぼろ泣いて…
私も踊り続けよう…と今、気持ちを新たにしています。
この映画のラストシーンをご存知ですか?
まだご覧になっていない方はぜひ。
特にボロボロの心には特効薬です♪
ありがとうはるみさん♪
ありがとうアルパチーノ♪
支えてくださったみなさまにも心からありがとう!♪
…もう大丈夫です♪
塀の中の中学校を観る
つゆのひとしずく(植田正治の写真世界を彷徨う)を観る
この作品に興味を持ったのは…一枚の写真からです。
俳優の佐野史郎氏が山高帽をかぶり…一点を見つめている。
けれどその目が何を見ているのか…とても気になった。
佐野史郎氏は、このとき一体誰になっていたんだろうかと…。
俳優とは何だろう…そんなことも思った一枚の写真。
Facebookで
…その写真に惹かれて…佐野さんに直接コメントを入れたのがきっかけでした。
撮影したのは安珠さんと知る。国際的モデルとして活躍後
写真家に転身なさったという、またまた不可思議な経歴の持ち主。
意識的に情報を取り込まない私は、逆な意味でアンテナに引っかかるものには
とことん興味を持つ。
これは佐野史郎氏の監督作品…。
文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦作品に選ばれたという
情報もネットでみつけました。
すぐにアマゾンで調べて、購入。
私は佐野史郎氏の語る小泉八雲に山本恭司氏が音楽を担当している
作品を今までに数回観ている。
本編の中には、小泉八雲のなかで使われている印象的な言葉も
多様されているという。
佐野史郎氏の小泉八雲へのこだわりは
ライブのトークからも伝わってきた。
ここを観ない訳にはいかない…。私は直感的にそう思った。
まずは何も先入観なしで観る。
それが私流。
けれど見始めてすぐに
作り方に興味を覚えた。
その作品が植田正治氏の写真から生まれたということだけは
事前に知っていた。
植田正治氏は鳥取県出身(1913~2000)世界的な評価も高い
写真家である。
その作品からイマジネーションを受けたには違いないと思うけど
切り取られた時代の断片をどう結びつけて行くのか…
それが楽しみだった。
一枚の写真から受け取るものはそれぞれに違う。
そこは絵と同じだ。
一度見終わってから、この作品の成り立ちを読み始めた。
そこには
不思議な符号があちこちに隠されている。
監督の佐野史郎氏のことを私は勝手に「媒体」であると思った。
役者という職業では、常に自分を無にする訓練ができているのだろう。
だから、作品の声が聞こえる。
作者の意図とつながることができる。
沢山の創作の魂が、この作品のなかに織り込まれて
静止画をメインに、淡々と流れて行く…。
これでもかこれでもか…と畳み込むようなテレビ番組の中では
決して感じることのできない静寂と
受け取るものの意識を目覚めさせる何かが
そこにはあった。
このDVDには本編の他に使われた写真だけを
クリックできる植田正治氏のフォトギャラリーも
一緒に入っている。
膨大な量の写真から選んだ…という佐野史郎氏は
そこにパトリック・ラフカディオ・ハーン氏(小泉八雲)の言葉の世界を
重ねて行った。
それは、ある程度は年代別とか写真集別…になっているけれど
明らかに佐野史郎氏流の美学が貫かれていると思う。
新たに付けられたサブタイトルは佐野史郎氏の手によるものなのだろうか。
「都市」と名付けられたメニューには
1932年の驚くべき日比谷や銀座がある。
「学校」と名付けられたメニュー(私はこれが一番好き)
を観ながら、写真家の目が欲しいと切望する私がいたり
「砂丘」と名付けられたメニューには
写真家の人生観を伝えてくる物語を感じた。
さて…もう一度本編に戻って再生。
今度はある程度…その写真が撮られた時代や場所も頭に入っている。
またさっき見えたと思ったものとは違うものが見え始めた。
プロローグには金子國義氏の絵が使われている。
そこここがさりげなく贅沢だ。
カメラの追い方も写真館に置いてある小道具も興味深い。
たった80年ほどの歳月が
こんなにも変化に富んだものだったとは…。
今時の時代の流れは、速いように見えても
実は…と思う。
時の迷宮に迷い込むとき、人は自分の記憶以外に
他の人の記憶も同時に体験する。
日本がまだ貧しかった時代に…人々は生き生きと
黙々と我が道を生きていた。
植田正治さんの写真から私は人間の尊厳を感じ
豊かな時代とは何だったかを思い出す。
モデルに登場する彼らは少しお茶目だったり
被写体としての役を精一杯に演じていたりする。
けれどいつの時代にも
普遍的なもの…心の在処のようなものだったり
子供たちの笑顔だったり…どこかで深い記憶に結びつくものを
見逃さないように…と集中して観る。
うん、これは絶対に色々な背景を踏まえてみると
何倍も楽しめる。
佐野史郎氏の声の持つ陰影。
奥様の石川真希氏の軽妙な台詞まわし。
俳優の世界もまた、深い奥行きに満ち満ちている。
ここでの音楽は後に衝撃的な死を遂げた加藤和彦氏。
もちろんこの作品ができた後も、誰も想像できなかったと思う。
そして、この音楽が素晴らしい…まさに私好みなの。
昭和を彷彿とさせたり
のどかなものを伝えたり
バッハのように計算され尽くし、揺らされる箇所もある。
加藤和彦さんを
フォークの代表格のように捉えていたけど
それが間違いだったことにも気づく。
ブックレットが表紙についている仕様もなかなか。
みんな色々考えるんだなあ…。
サブタイトルに書いてあった
時空を超えた物語世界の「物語世界」のところに
「サーガ」とルビがふってあった。
これも調べてみたらなかなか奥が深い。
語源は全く別だけれどこのDVDで
表現者のサガのようなものを随所に感じた。
このサガとは…それぞれの表現者の人生観に他ならない。
いくつもの魂が込められたものを
ひとつの世界でまとめるのに
36分という構成のバランスは心地よい。
絶妙な長さだと思った。